――ファンタズマゴリア――
走馬灯のように 次々と移ろいゆく 幻想の中で
プロフィール
管理人:波華
観劇好き。主に狂言、歌舞伎、日本舞踊、大衆演劇、落語などをよく観ます。大蔵流茂山千五郎家、尾上菊之助さん、中村勘九郎さん、尾上菊之丞さん、橘菊太郎劇団、劇団花吹雪、などがお気に入り。
現代演劇で最大のお気に入りは花組芝居。その他、大中小気になった劇団を観に行きます。
日本舞踊のお稽古をしています。
たまに着物や歌やゲーム(DQ,FF)の話題も。
連絡先 e_yassie@yahoo.co.jp
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2011年11月08日(火) 16:04:05
「十三人の刺客」
1963年
監督:工藤栄一
出演:片岡千恵蔵 (島田新左衛門)
里見浩太朗 (島田新六郎)
嵐寛寿郎 (倉永左平太)
西村晃 (平山九十郎)
阿部九洲男 (三橋軍次郎)
リメイクじゃなくてオリジナルのほう。
これを見て、リメイク面白いなぁと思った。良し悪しとかじゃなくて、リメイクではいろんな面で進化しているしたくさんの工夫もされているんだなと思った。私はリメイクのほうが好きだなぁ。
吾郎くんの暴君ぶりは見事だと思う。オリジナル版では癇癪持ちのわがまま駄々っ子でわめき散らす殿様だけど、吾郎くんは静かなのにもっと狂気を感じた。山猿の骨は堅いのうという台詞、落合宿で刺客に狙われながらもどこか楽しんでいる様子、こういうところが映画全体に奇怪な空気をもたらしていていい味になってると思う。
四肢を斬られ舌を抜かれた女は、リメイクにしか出てこないんだね。牧野靭負の話を聴いて島田が斉韶暗殺を決心するのは、オリジナル版を作られた時代にはすんなり納得できるものなのかもしれないけれど、いくら天下泰平のためとはいえ将軍の弟を暗殺するなんて大それたことをそうやすやすと引き受けるなんて、今の感覚だとありえないような気がする。でも、四肢を斬られた女は今の感覚でも十分説得力のある材料だった。だから、島田の決心をすんなりと受け入れられた気がする。
それで、「みなごろし」の紙を掲げて、「斬って、斬って、斬りまくれ!」だもんなぁ。島田が抱えた怒りの大きさと決意の固さをぐっと感じるよ。
伊勢谷友介の役もリメイク版だけなんだなぁ。同じようなポジションの人はいるけど、あんなにキャラが立ってない。岸部一徳とのシーンは秀逸!
リメイク版のほうが、13人それぞれのキャラクターにフォーカスが当たっていると思う。でも13人もいたら時間不足で、古田新太さんとか十分に描かれてなくて不満なんだけど。
オリジナル版では、島田は落合宿で斬り合いの場に出張ってないんだよね…最後の最後まで刀で戦ってなかったんだ…意外だった。
あれーなんかリメイク版の感想ばかりになってしまった。
63年版で気に入った場面。
新左衛門が息子の新六郎の三味線を手にとって、「三味線で身を立てようと思ったこともあったが、これがなかなか難しい。侍で死ぬが楽だと悟ったわ」と言って弾く。かなり手が多く激しい曲。それを聞いて新六郎が刺客の仲間に入ることを決心する。
ここがすごーくいい場面でねぇ。いちばん好きだわ。これをリメイク版でやっても成り立たないのが分かる気がする。役者にも不向きだし雰囲気的にも合わないし観る側の感覚にも合わない。素晴らしい。
「桜田門外ノ変」
2010年
監督:佐藤純彌
出演:大沢たかお (関鉄之介)
長谷川京子 (関ふさ)
柄本明 (金子孫二郎)
生瀬勝久 (高橋多一郎)
加藤清史郎 (関誠一郎)
西村雅彦 (野村常之介)
伊武雅刀 (井伊直弼)
北大路欣也 (徳川斉昭)
坂東巳之助 (有村次左衛門)
榎木孝明 (武田耕雲斎)
井伊直弼の暗殺は最初の30分で達成し、残りは後日談のような。そんな内容だったとは、なんとなく意外。
暗殺に関わった者たちは、傷を負って死亡したり、追われる途中に切腹したり、捕えられて斬首となったり。まだ10代20代の若者も含まれていたことに胸を突かれたけれど、全体的に淡々と描かれているなぁという印象。
坂東巳之助くんは、薩摩藩士で最終的に直弼の首を取る重要な役どころ。腹の据わった野太い声で薩摩弁を話す様子はさすがと思った。
井伊直弼がかなり悪いやつ風に描かれているのだけど、本当のところはどうなんだろう。
確かに、教科書には修好通商条約を強引に締結して安政の大獄でたくさんの人を殺した、みたいな書き方をされているし、だから暗殺もされたのだろうけど。でも、茂山千五郎家が井伊直弼に気に入られてお抱えになったという話を大人になって聞かされたら、実はそんな悪い奴じゃないんじゃ?と思えてきて。えぇ単純なもんです。狂言好きで悪い奴ってのが両立しないわけじゃないだろうけど。でも通商条約を結ばなかったら戦争になって負けて清よりひどいことになってた可能性もある。先入観にとらわれず、多角的なものの見方をせにゃいかんわな。
1963年
監督:工藤栄一
出演:片岡千恵蔵 (島田新左衛門)
里見浩太朗 (島田新六郎)
嵐寛寿郎 (倉永左平太)
西村晃 (平山九十郎)
阿部九洲男 (三橋軍次郎)
リメイクじゃなくてオリジナルのほう。
これを見て、リメイク面白いなぁと思った。良し悪しとかじゃなくて、リメイクではいろんな面で進化しているしたくさんの工夫もされているんだなと思った。私はリメイクのほうが好きだなぁ。
吾郎くんの暴君ぶりは見事だと思う。オリジナル版では癇癪持ちのわがまま駄々っ子でわめき散らす殿様だけど、吾郎くんは静かなのにもっと狂気を感じた。山猿の骨は堅いのうという台詞、落合宿で刺客に狙われながらもどこか楽しんでいる様子、こういうところが映画全体に奇怪な空気をもたらしていていい味になってると思う。
四肢を斬られ舌を抜かれた女は、リメイクにしか出てこないんだね。牧野靭負の話を聴いて島田が斉韶暗殺を決心するのは、オリジナル版を作られた時代にはすんなり納得できるものなのかもしれないけれど、いくら天下泰平のためとはいえ将軍の弟を暗殺するなんて大それたことをそうやすやすと引き受けるなんて、今の感覚だとありえないような気がする。でも、四肢を斬られた女は今の感覚でも十分説得力のある材料だった。だから、島田の決心をすんなりと受け入れられた気がする。
それで、「みなごろし」の紙を掲げて、「斬って、斬って、斬りまくれ!」だもんなぁ。島田が抱えた怒りの大きさと決意の固さをぐっと感じるよ。
伊勢谷友介の役もリメイク版だけなんだなぁ。同じようなポジションの人はいるけど、あんなにキャラが立ってない。岸部一徳とのシーンは秀逸!
リメイク版のほうが、13人それぞれのキャラクターにフォーカスが当たっていると思う。でも13人もいたら時間不足で、古田新太さんとか十分に描かれてなくて不満なんだけど。
オリジナル版では、島田は落合宿で斬り合いの場に出張ってないんだよね…最後の最後まで刀で戦ってなかったんだ…意外だった。
あれーなんかリメイク版の感想ばかりになってしまった。
63年版で気に入った場面。
新左衛門が息子の新六郎の三味線を手にとって、「三味線で身を立てようと思ったこともあったが、これがなかなか難しい。侍で死ぬが楽だと悟ったわ」と言って弾く。かなり手が多く激しい曲。それを聞いて新六郎が刺客の仲間に入ることを決心する。
ここがすごーくいい場面でねぇ。いちばん好きだわ。これをリメイク版でやっても成り立たないのが分かる気がする。役者にも不向きだし雰囲気的にも合わないし観る側の感覚にも合わない。素晴らしい。
「桜田門外ノ変」
2010年
監督:佐藤純彌
出演:大沢たかお (関鉄之介)
長谷川京子 (関ふさ)
柄本明 (金子孫二郎)
生瀬勝久 (高橋多一郎)
加藤清史郎 (関誠一郎)
西村雅彦 (野村常之介)
伊武雅刀 (井伊直弼)
北大路欣也 (徳川斉昭)
坂東巳之助 (有村次左衛門)
榎木孝明 (武田耕雲斎)
井伊直弼の暗殺は最初の30分で達成し、残りは後日談のような。そんな内容だったとは、なんとなく意外。
暗殺に関わった者たちは、傷を負って死亡したり、追われる途中に切腹したり、捕えられて斬首となったり。まだ10代20代の若者も含まれていたことに胸を突かれたけれど、全体的に淡々と描かれているなぁという印象。
坂東巳之助くんは、薩摩藩士で最終的に直弼の首を取る重要な役どころ。腹の据わった野太い声で薩摩弁を話す様子はさすがと思った。
井伊直弼がかなり悪いやつ風に描かれているのだけど、本当のところはどうなんだろう。
確かに、教科書には修好通商条約を強引に締結して安政の大獄でたくさんの人を殺した、みたいな書き方をされているし、だから暗殺もされたのだろうけど。でも、茂山千五郎家が井伊直弼に気に入られてお抱えになったという話を大人になって聞かされたら、実はそんな悪い奴じゃないんじゃ?と思えてきて。えぇ単純なもんです。狂言好きで悪い奴ってのが両立しないわけじゃないだろうけど。でも通商条約を結ばなかったら戦争になって負けて清よりひどいことになってた可能性もある。先入観にとらわれず、多角的なものの見方をせにゃいかんわな。
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